ねぇ……どうして貴方は、
僕の背中しか見ないのかなぁ…?



















『アウェルサ・ウェヌス』



















夕闇。
次第に濃くなっていく空の色。
朱が血みたいになって、空へ広がる真っ赤な染み。

じわり、じわりと、病んでるみたいだ。

まるで僕と同じで、ただ、ずっと。
浸蝕していく、アメーバ。

単一細胞、心はなく。
生存本能、浅ましく。
それでも怠惰に、ただ在るのみで。






気温は生温かく、寒いよりずっと悪寒を覚える。
暖かいようで寒い、今は何月なんだろう?
季節は春?秋?それとも、冬?
―――そんな事、どうだっていいけど。

それさえ知らなかったら、貴方に向ける言葉が無いから。
僕には語る、「自分」も無いし。

だからいつも、ただ、ずっと、僕は窓から外を眺めてた。






「……」

音もないままに、
鋭利な刃物が傍をかすめたような、
そんな緊張と恐怖が入り混じった感覚。
どんよりと緩く流れていた空気が硬く変わった。

背後から音もなくそっと、僕の身体に廻された腕が、
だだ黙々と、重みを諭す。


僕には、ね。何もないから、
それからどうにか繋げる言葉だって出てはこないけど、
それでも自分の体温が下がっていくような気がしたのは本当で、
貴方の腕に、それを回復する温もりは無いんだって分かってた。

それに代わる嘘の言葉や、嘘の優しささえも、何も無い事も。






後ろから廻された腕は、なだらかに僕の身体で稜線を描く。
貴方の気配は、僕の耳の裏側に届く生温かい息だけで、
それが何となく怖かった。

肩口から忍び込んだ貴方の指が、舐めるように僕を蠢いている。
それでも冷めた僕の心は、
慣らされた、”その”感覚へ自分自身を導こうと、
何もない頭の中を、必死に壊して、壊して、壊して。

壊れた。







ガタガタと崩れ落ちた意識。
自分自身をこんなにコントロール出来るようになった事、
きっと貴方は誉めてなんかくれないだろうけど、
それでも、それは、僕自信が作り上げた僕で。
どんな誰にだって真似は出来ないんだろうね?

お陰で、貴方じゃない誰かにだって勝手に反応しちゃうから、
僕はいつも壊れっぱなし。
ノイズばかり吐く無能なラジオと同じ、
感度だけは良くって、勝手に無駄な電波を受信して、喘ぐ。



”その行為”だけに支配された頭では、最早体は支えられなくて、
僕はそのまま窓の桟にもたれかかる。
足はガクガクして、力が入らず、
ただ、貴方のなすが侭に、
その指や舌で追い立てられるだけの、醜い動物。

開く事のない窓。
視界を狭める鉄の杭がびっしり埋められた、鍵のない窓から、
一番星が見える。

ああ、まるで掴めそうだなぁ、なんて妄想まで浮かんでくるのは、
きっと僕が窓の外を知らないからだ。
ここから外の世界は、きっとどんなものだって触れられるほど近くにあって、
僕にはそれが無い、ただそれだけの事なのに、
なのに、
つい―――思ってしまうんだ。

そんな妄想も、内部を突き上げられる感覚に、どうせすぐに消えてしまうけど。



崩れそうな身体を、鉛のストライプに縁取られた窓に掛けた手で支えて、
僕はズルズルと堕ちていった。
そのままだと床につっ伏してしまいそうな僕の、
腰から下だけでも貴方が支えてくれていて良かった。
抱き締めるなんて意味でもなく、
それが貴方にはただ便宜上の事だったとしても、
僕には自分を失って声を上げるのが楽だから。

僕の嬌声を聞くと、貴方は少し嬉んで、更に僕を突き上げる。
繋がった場所から聞こえる、ぬちゃぬちゃと湿った音で、
もっと僕を遠くにイッちゃうように狂わせて。
そうでないと、折角壊れた僕の頭がまた静かになってしまうから、
いつまでも、いつまでも、電波を頂戴。

僕は脅えたくないから、ね?




もう、一番星は見失ってしまった。
もう、星々の灯りに紛れてしまった。
夕闇は何時の間にか宵闇へ。


何度も精尽き果てて、声が枯れるまで、
窓の杭はギシギシ軋むよ。
掴んだ指から血が溢れても、貴方は何も見ないままで、
ただ、機械のように僕を貫くだけで。

何度目か、僕の中で貴方が弾けたら、
そこに残るのは月影。
開かない窓は、僕に何も与えないけど、
冷たさだけはそれでも分かるから。

僕は、またひとり。



冷たい床で気がついた時、いつもそこに貴方はいなくて、
そんな事とうに分かってても、
つい、漏れてしまう苦笑い。

星はもう無数に空を埋めていて、
一つぐらい僕が掴んで手にとっても、きっと誰も困らないだろうにね、
なんて、またそんな妄想が浮かんで消えて、
僕は血が滲んだ自分の掌を見るんだ。


――こんな血まみれの星なんて、やっぱり嫌かな?……

























暗い部屋で一人笑い。
貴方の動向や無言の言葉さえ、虚ろな頭に浮かんできて、
僕は熱に浮かれたように、笑って窓の外を見る。

いつも強く捕まれる腰の辺りに、
いっそ痕ぐらいついてないものかと、
だるい身体は重いままで外を見る。

硬く仕込まれた重厚な鉄格子に、滲んで染みついた僕の血に視界を阻まれながら。















ねぇ……どうして貴方は、
いつも僕の背中しか見ないのかなぁ…?
どうして僕の顔を見ずに抱くのかなぁ…?


例えばそれが、
貴方の心の奥深くで気付かない内に蔓延った、
後ろめたさだったらいいのに、

……なんてね。

僕は心の中で呟いて、また喉の奥で、笑った。









*Noisy* 2005-2002.T・U・E.WhiteBox.Rin Inoue.Josefine-kainahime






うむむむ・・・・・鬼畜受っぽいなぁ・・・すいません。
只今作者がキチクーモードなものでして。
良い具合に電波キてたらいいんだが。
壊れ具合はどーでせうか、カミちゃんの。何しろラヂオだし(謎


つか、また監禁なんですか(焦
烏×カミだと、どーしても何時の間にか監禁が当たり前に・・・。
うむむ・・・・仕方ない、私の趣味です!(どーん)
・・いや、マジ。


えらい久しぶりに文章書いてみたくなったんで
突然ガガーっと書き上げたもんでして・・。
でも久々に書いても、やっぱ私の文章だなーと思ったです(当たり前)
意味不明で・・。


とにかく、最初の節と最後の節の繋がりさえ
分かってもらえたら、これ幸い。
因みに、「アウェルサ・ウェヌス」ってのは、
「後ろからの愛」って意味の言葉で(確かギリシア語・・だったかな?)
要は、まぁ・・体位ぢゃなくて・・入れるトコが後ろ(以下略
・・・そんな言葉なのです!(笑顔


あ、でもこの話のポイントはバッ(以下自粛






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