遠い幻の音。
*Just now*
2005-2002.T・U・E.WhiteBox.Rin Inoue.Josefine-kainahime
季節を過ぎた花火が、湿って腐れた音を響かせて、 僕の手の平から花びらを散らしてた。 君はぼんやり窓の向こう、 僕を見てるふりで溜息を吐いてる。 雨がぽつぽつ落ちてきて、 もっと沢山沢山降ればいいのに、と、 そう考えながら僕は、 手に持つ花火の生き急いだ姿を眺めた。 じゅっと焦げた匂いがして、 僕の手の中で命が消える。 このまま、 このまま、 自分だってどこかへ消えてしまえばいい。 落ちていく火の粉が、黒くぼやけて土にかえっていくのと同じように 誰にも知られない様に 君にも知られない様に 僕の存在が消えてなくなればいいのに。 降る雨はきっと僕の涙で、 遠いあの日を思い返してた。 小さな僕の手の中で、 燃えてる線香花火。 もう聞く事もできない、 あの人の呼び声でワガママに終わりを告げられた。 消えかけた火が叫ぶように、 僕を置いていかないで、と最後の光 灯した。 遠いあの日の、 二度と帰らない幻の音。 遠く霞んで消えた、 僕の想いに似た、幻の音。 雨は降り続けて、 僕の体を静かに冷していく。 ぽつぽつ、ぽつぽつ、 小さな穴があいて、僕を壊していくように、 じんわりと、やわらかな痛みが僕を刺し続けた。 溶けて、 溶けて、 何故僕は、このまま消えてしまえないのだろう? 戻せないものを振り返ったままで、 どうしてそのまま消えてしまえないのだろう? 手に持った花火は、 濡れてぐしゃっと形を崩したのに、 僕はまだ手を放せない。 ずっと 雨。 ずっと ずっと、 降り続く雨。 僕の中のあの日はもう見えない。 僕の中のあの日はもう帰らない。 その時、ふいに僕を打つ雨が途切れて消えた。 背後から掲げられた傘に、僕は振り向かずに涙をぬぐう。 僕を抱え起こす君の腕に、僕は見えないように涙をぬぐう。 君は"今"を大事にしないと怒るから。 過ぎ去った"過去"に縛られた僕を悲しい目で見るから。 「風邪ひくだろ」 小さい声で、そう聞こえたから、 僕は無理矢理笑って、こくんと肯いた。 雨が、途端にざあっと大きな音を立てて降り始める。 君のさす傘に埋もれて部屋に戻りながら、 僕はもう一度、さっきの花火の残骸を振り返った。 儚く消えた、小さい花びら。 僕の胸に、チリっと懐かしい痛み。 「花火をしたけりゃいつでも出来る」 分かっていながらそれを捨てれない僕に、そう言って君は先を急かす。 でも、僕は笑う事は出来ても肯けない。 「たとえ消えても、思い出す事は出来るだろーが」 君が僕の肩をぎゅっと掴んだ。 消えたいと願った、僕を現実へ引き止めるように。 「雨の日だろうが、あったかい部屋の中だろうが、違う花火をしてようが 頭ん中だったらいつでもキレイに燃えるだろ」 君の言葉につられて、僕の心の中でさっきの花火がもう一度、咲いた。 とっても綺麗で、力強くて、楽しそうに、 それはパチパチと誇らしげに光を放っている。 まるで、遠いあの日のそのままの姿。 鮮やかに甦る、消えたあの日の音。 「・・・俺は、お前の頭ん中で遊んでる事にまで、文句は言わねぇよ」 僕を見ないで君が言った。 君の視線は、ドアの向こうのあたたかい部屋で。 君の手は、僕の肩をしっかり掴んだままで。 「戻ろう」 僕の背中が、ぐいっと押される。 強く、真っ直ぐに"今"を見る、君の心で。 「うん」 ああ、僕は消えなくてもいいんだね。 あの火の粉と一緒に 儚く消えなくてもいい、と信じていいんだね。 僕の心から、 多分ずっと消える事はない、 あの日の線香花火の小さな音が、 いくら僕を連れ去ろうとしても。 小さな僕が線香花火で遊んでる。 儚いかすかな音をたてて、 在りし日の"今"を誇示してる。 落ちては消える火の玉。 目に染みる煙。 楽しくて、目を細めて笑う僕。 いつまでも、 いつまでも、 綺麗なままで いつまでも、 いつまでも、 僕の心に咲け、 綺麗なあの時のまま。 これからは君と一緒に、 君といる現実の世界で、 笑おう。 君と、僕がいる、 "今"がとても大好きだから。 君と、笑おう。 |
絵に煮詰まって、全然思い通りに描けないので文章を書いてみる事に。
というか、文章もスランプ気味というか、 何故私の文章は心に伝わらないんだろう、と、 最近いじいじ考えてたんですね。 で、思うままに書いてみたんですよ。 あんまり色々考えないで。力を抜いて。 だから、あんまり飾らない言葉で書いてるつもりです。 ・・・見る人からすれば結局いつもと変わらないかもしれないけど(汗 ま、それは私の文才の無さだから仕方ない・・・。 ↓テーマ(?)が伝わったか不明ですんで。一応解説↓ "過去"は勿論、烏哭と一緒にいた頃の思い出です。 でも、それだけでなく、今でも"先生"の存在が 一番大きい事を言いたかった訳です。 「ワガママに終わりを告げられた」って言うのは、 ふつーに花火で遊んでるのをやめる合図(?)、 それ+あの9巻の最期のシーンも意味してます。 後々の悟浄さんの科白、 (というか、今回悟浄さんじゃなく三蔵でもいいかな、と思ったんですが) あれは、「今を大事にしないと怒る」 「過去に捕らわれた僕を悲しい目で見る」、というのが、 "過去を捨てろ"といってる訳ではないと言いたかったのですよ。 人生二元論じゃない、間違いの反対が必ずしも正解ではない、 自分といる今を大事にしながら、昔を懐かしむのは悪い事じゃない、 そんな感じなのです。分かるかしら(汗 自分と楽しく未来を見て生きていっても、 綺麗な過去はいつまでも消えないよ、 だから今を大事に生きよう、自分を大事にしよう、っていう励まし(?)なのです。 それを伝えたかったけど・・・・駄目だこりゃ。 文章の才能ある人に書いて欲しかったかも・・・。 ああ解説長い〜〜〜(汗 |